自然浴生活 SPECIAL SITE

SHARE

VOICE

2018.05.16

自然に近い生活への回帰—人間の本能を大切にしたハッピーな人生へ〜 ニーハイ・メディア代表ルーカスB.B.さん〜

SHARE

自然に近い生活への回帰—人間の本能を大切にしたハッピーな人生へ〜 ニーハイ・メディア代表ルーカスB.B.さん〜
あなたの理想のライフスタイルはどんなものでしょうか。ライフスタイルに大きな影響を及ぼす住宅の購入に際して、住宅や園芸の専門家、またライフスタイル誌の編集者、人気のガーデナーたちがどんな情報発信をしているのかは、私たちにとっても有用です。そこで今回はトラベルライフスタイル誌『PAPERSKY』や、キッズ誌『mammoth』編集長で、様々なイベント企画なども行うルーカス・バテキ・バルコさんにインタビュー。日本の地方の魅力や、子供たちが自分らしく育っていく環境や体験についてお聞きしました。

今から25年前、カリフォルニア大学を卒業した、その翌日に来日。子供の頃から好きだった雑誌作りを友人の一言で思い出し、カルチャー誌「TOKION」からスタートし、現在はトラベルライフスタイル誌「PAPERSKY」とキッズ誌「mammoth」の編集長を務めるルーカスさん。また、紙面に関連する地方でのサイクリング・イベントや、子供向けのワークショップなどを開催。人間にとって普遍的に気持ちのいい暮らしや、生きていく上で大事な体験を提案しています。

自然が変われば文化も変わる。小さいようでバリエーションに富む日本の魅力

——「PAPERSKY」も「mammoth」も雑誌から派生したイベントを開催されていますね。

「PAPERSKY」では日本全国を回って、「Tour de Nippon」という自転車のイベントを年3回やっています。アメリカの大学時代に自転車部だったんですが、東京で乗る気になれなくて、乗るにはどうしたらいいかなと思った時、ちょうど旅の雑誌を作っているので、もっと読者と一緒に旅を作れたら自分も乗れるし、僕らが雑誌で伝えたいことを一体感を持って感じてもらえると思いました。

僕らは自転車を旅の道具として扱っていて、そんなに速く走れないミニベロという小さい自転車を使っています。もう9年やっていて、日本各地を22ヶ所回ってきましたが、ツアーを企画するときは地元の人とたくさん話し合います。すると地元の人も地元の良さを再発見できるから。この間、秋田県に行ったときは「外国人もきてほしい」と言われて、日本人と外国人、街と地方のアイデアがミックスして、新たな秋田を見てきました。

——ルーカスさんにとって日本の田舎の魅力はどんなところにありますか?

山も海も、暑いところも寒いところも、自然のバリエーションがとんでもなく多い。たとえば、北海道と沖縄は3時間ちょっとぐらいだけど全然別世界。自然が変わると文化も変わるし、言葉や生活スタイルがガラリと変わるのは、旅の一番刺激になるところだから、日本はそこが楽しいですね。

——「PAPERSKY」も、旅先の文化や何かを発見してもらうということを伝えているんですね。

それがメインです。例えばスイスの特集では「Landscape Art」というテーマで、日本人のアーティストと一緒に、過去にホドラーやクレーなど、偉大なスイスの画家たちが描いた場所を探しに行く旅をしました。だけど100年前に描かれた絵だから、誰もどこにあるかはわからない。風景画を手に地元の人に聞きながら、絵が描かれた場所を探して歩きました。それと彼らが過ごしたであろう眺めのいいホテルや山小屋に泊まってきました。

——読者の方の旅への興味が変わってきている印象はありますか?

『PAPERSKY』は20代後半から40代がメインの読者で、個人で自分の興味があることとか、せっかく旅するなら新たな何かを見つけてきたいとか、一回り大きな人間になれるようにチャレンジしてみたい、という気分の人が多いと思います。

自分が楽しいと思うことが学びになるというメッセージを持ったワークショップ

——キッズ誌「mammoth」をスタートされた背景や理由はどういうものでしょう。

同世代の友人たちに子供が生まれるようになって、この子どもたちが生きる未来はどうなっているだろうと想像したときに、今、僕らが彼らのために新しい世界を考えなければならないなと思って。未来をリードできるような子供はどうやったらできるかな、と思って「mammoth」を作り始めました。

『mammoth』は子どものいるファミリーに向けて情報や体験を提供してきましたが、昨年、本誌をリニューアルして、お話を通してメッセージを伝えるメディアになりました。前号では、Caravanというミュージシャンに依頼し、彼にストーリーを描いてもらいました。特集全体も「SONG」というテーマで組んだので、歌に関係するゲームとか、歌うことをテーマにした漫画も掲載しました。『mammoth』は、雑誌だけでなく様々なワークショプやイベントなども企画していて、「Play to Learn」というコンセプトを元に、文字どおり遊びの中に学びがあるということで、成績とか社会的にやらなければいけないことより、自分が楽しいと思ってやることが学びになるということを伝えています。

父さんもお母さんも人間としてやりがいのあることをやっていく時代

——家族や親子のあり方も変わってきたなという印象はありますか?

日本の場合、お父さんが育児に関わろうという意識は、確実に変わってきたと感じています。あとは、働く女性も増えたので、お母さんたちも子育てを自分だけやろうとするのではなく、保育園に預かってもらうとか、お母さんたちも一人の人間としてやりがいのある生き方ができるような環境に変わってきたように感じています。その二つが一番大きいんじゃないかと思います。

——キャンプ場で開催されているファミリー向けのフェスの中で大事にされている切り口がありますよね?

自然と文化をともに体験するということ。それは「mammoth」にしても「PAPERSKY」でも大切にしていることです。木とか植物とか水とか、身の回りには自然が溢れているのに、街に住んでいると自然の中で生かされていることを忘れがちですよね。だけど自分たちも自然の一部だと思い出すことで自然を大事にする気持ちが生まれてくる。自然の中で遊ぶことは楽しいし、自然を大事に思うことは気持ちがいい。自然を大事にしないと食べるものもなくなるし、空気が汚れたら息もできないし、水がなくなれば死んでしまう。一方で文化は、人間が作り上げるもので、人間の美しい表現の部分。この二つを大事にして活かしていくことが、ハッピーな人生に繋がるんだと思います。

ニューヨークから2時間の場所で起こっているファーム・ムーヴメント

——2020年代の住まい、生き方、暮らし方を考えたとき、ルーカスさんがポイントになりそうだと思うことを教えていただけますか?

今、話した文化と自然、子供のことも自分の時間のこともそうだと思います。一つ例として、ニューヨークの特集の号で「あれ?これがニューヨーク?」と思うかもしれないけど、街から2時間くらいのアップステートと言われるエリアで、今、若くてかっこいいファーマー、特に女の人たちが自分で作物を作りたいと、新しいスタイルのファームがいっぱいできている。すると新鮮な食材を求めて料理人が引っ越してきて、その日採れた食材で料理する。すると、都会で暮らしている人が週末になるとそこへ行きましょうとなって、いいサイクルが生まれる。

ニューヨークのファーマーたちの姿を見ていて、現代人は自然や土から離れすぎていて、本能的に農業のような自然に近い生活に戻りたいんじゃないかと思った。自然がないと人間は存在できないということを、より意識することで、人間をはもっと元気に生きられる思います。

農業に限らず、人は自然に触れることで個人的な興味とか表現が素直に出てくるものなんです。 自然の中では普段考えないことを考えさせられるし、自分の時間、自分が生きている感覚を見つけることにもなると思います。


観光ではなく、場所のストーリーを掘り下げる旅。旅を通じて出会った各地の人々と交流することで見つかる新たな価値。そして子供のうちになるべくさまざまな経験をさせることで、直感的に好きなものが根付くという、勉強以前のエデュケーションの大切さを話してくれたルーカスさん。自然と生きるライフスタイルを標榜するというより、自分に必要な自然とは何かを考える手がかりになりそうです。

プロフィール

ルーカス・バテキ・バルコ

1971年生まれ。ニーハイ・メディアジャパン代表取締役。カリフォルニア大学卒業後、来日。1996年に当時のエッジーな東京のカルチャーを紹介したバイリンガル・マガジン『TOKION』を創刊。以降、トラベルライフスタイル誌『PAPERSKY』、キッズ誌『mammoth』を発行しながら、自転車イベントやファミリー向けフェスの開催、コラボレーション・ブランドのプロデュースなどに自身のクリエイティヴを活かしている。

Text:石角友香
Photos:YosukeKAMIYAMA