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2017.11.22

最前線で建築と園芸に関わるクリエーターが考える住空間の今

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最前線で建築と園芸に関わるクリエーターが考える住空間の今
自然と暮らすライフスタイルのトレンドは日々、変化・進化しています。このコーナーではガーデン・エクステリアや建築、住宅の現場から、プロの目線で毎日を豊かにするアイデアや知見をご紹介するシリーズです。園芸と建築の分野で常に新しいアプローチを行うお二方、株式会社DAISHIZEN代表の齊藤 太一氏と、オンデザインパートナーズ主宰の西田 司氏をゲストスピーカーにお迎えしたトークセッションをお届けします。
対談者
  • ゲストスピーカー:株式会社DAISHIZEN 齊藤 太一氏 / オンデザインパートナーズ 西田 司氏
  • モデレーター:株式会社W DEPT河崎 知子氏

最前線で建築と園芸に関わるクリエーターが考える住空間の今

河崎:トークセッションでは、ガーデンエクステリア市場拡大のヒントや可能性を探るため、住まい手視点での、住まいと自然との関わりについてお伺いします。ハードをつくるという発想ではなく、それを使う人、そこに住まう人のライフスタイルや文化をつくるという意識を持ち、常に時代をリードする提案をされるお二人の考え方から、未来の消費者に対する糸口を見出していきたいと思います。 では、まず発想の原点や、モノづくりの過程で大切にされていることをお聞きします。

2017年の家族のカタチを再検証する

西田:僕は普段建築家として住宅づくりに携わっています。都市のすき間に家を建てたい、600平方メートルの平原を最大限使用して小さな家を建てたい、外にピザ釜を作ってキッチンにしたい、書斎は小屋のように離れた場所にしたい等々、実に様々な要望があります。規格住宅ベースではできないことをやりたいというお客様に応対しています。

世帯類型の推移という面では、1985年から現在までの間に、子どもがいる世代は40%から25%まで縮小しています。日本は、1995年ぐらいから物価が変わっていないと言われていますが、住み方はかなり変わってきています。以前はシングルで住んでいる人は20%程度でしたが、2017年現在だと35%ぐらいになり、2人暮らしとシングルを入れると50%を超えます。僕みたいに普段から住宅の設計をしている側からすると、家づくりは、子どもがいる家がメインなのかと思いきや、結構変化していることを感じています。

また、何が自分に必要で何が不要かを考える際に、所有の欲求も変わってきていると感じています。施主が自分にあったライフスタイルを考え暮らしそのものを「育てていく」感覚が、今、非常に大事なのではないかと思いながら設計をしています。

空間に植物が入る=命を吹き込み

齊藤:モノづくりに関して、いくつか方程式が自分の中にあって、そのひとつに五感を刺激するーー花が咲いたとか、実がなって食べられるというのがあります。空間に植物が入ってくる良さは、命を吹き込むということだと思います。植物の美には、建築とかインテリアではない変化を与えるということがあると思っています。

例えば、ライフスタイルショップのテイストに合わせて、鉢にペンキを塗ってサボテンを入れて、手軽なグリーンを提案しました。ファッションの流行に合わせたマテリアルを使い、ファッションと植物をつなげて提案することで、植物が身近にある空間を作り出しました。蔦屋家電では、本と植物による空間を提案しました。私たちがやりたいことは、お客様に植物を取り入れていただくきっかけを提案することなのです。

私たちには、カタログにはまるような決められた商品がありません。何を売っても何を作ってもいい。とにかく話して、聞いて、お客様にとって重要なものを自然と結びつけてつくり上げていくというのが一番大きな軸かもしれません。

テーマ①自然災害をポジティブに変換できるデザインはないのか?

河崎:2020年の消費者に向けて、自然はどのように求められていくのか、いくつかの観点でお聞かせいただきたいと思います。まず、世界各地で災害が頻発するといった、消費者を取り巻く自然環境の変化に対して、どういうアプローチが有効か、お考えをお聞かせください。

ゲリラ豪雨をデザインする?——自然災害すらポジティブに捉え直す

齊藤:ネガティブなものをポジティブにしたいと考えています。庭や外空間は自然災害に一番さらされる場所ですが、今考えているのが、「ゲリラ豪雨をデザインしよう」みたいなことなんです。水の道をつくったり、雨が降った瞬間だけ現れる景色があったとしたら、とても面白い。水に本来強い木でもあまりに雨が多いと枯れることがあります。そういう変化もデザインに変えていこうとしています。

とは言え、自然との戦いをどうポジティブに変えられるのかについては、まだまだ研究中です。年に何回もやってくる台風に対して頑丈なものをつくるというのも確かにそうなのですけれど、美しくないのは嫌なんです。建築と外空間、建築と自然とのバランスが取れていて初めて美しいと思っています。

テーマ②植物とワークライフバランスの関連性

河崎:続いて、消費者が強く関心を寄せているワークライフバランスについて、お二人はどうお考えですか?

働く場所に植物があることの効用

西田:最近はワークとライフがつながって来ているように感じています。ワークスペースに緑を取り入れるなどして、自分の家のように居心地を良くしないと、クリエイティビティが上がらないと思っています。

一つ例を挙げると、“バイオフィリックデザイン”という考え方があります。サステナビリティ先進企業として知られるインターフェイス社が公表したデータにおいて、緑がある空間や陽が差し込むワーク環境と、昔からの蛍光灯の普通のオフィスで窓も開かない環境で働く人々を、17カ国、2000人ぐらいを比較したところ、緑や光が入るところで働いている人のほうが6%も生産性が高いという結果が明らかになっています。加えて、幸福度や創造性などのメンタリティの価値も15%程度上昇すると発表しています。

最近弊社の事務所で実験として、打ち合わせテーブルの上にハンギングで緑を70鉢ぐらい吊ってみました。メンテナンスという意味で、突然元気がなくなるなど不確定なことが起こり得ますし、定期的に水もあげなければいけないなど正直面倒です。それでも植物を取り込んでいる現在のほうが以前より、働いている時間価値が上がっているように感じています。吊っている中にお気に入りの鉢があったら、自分のテーブルの上に置くこともあります。我が子のように育てて、また上に括りなおしたりしています。

テーマ③キッチンを外へーー価値を影響しあうシェア

河崎:続いて、シェアという観点から、空間における先進事例や現状を伺えればと思います。

自分にとっていいものを所有ではなく共有する

西田:「シェア」は、一般的にカーシェアやシェアハウスなど、一つの場所やものをみんなで使うという価値と思われますが、もうひとつ、自分のものをお裾分けする価値もあると思っています。最近、アウトドアでよく見かける“ギャザリングパーティー”、要は、持ち寄りパーティーに注目しています。一品一品は、アラカルト的に別々につくられたものを、ひとつのテーブルでみんなでつまむ。価値をそれぞれで持ち寄って影響し合うという行為です。自分にとっていいものを自分の中だけで完結させる、いわゆる所有欲求ではなくて、みんなで共有する、影響し合うことに価値があるのではと思っています。

都市部の公園や空きスペースにも注目しています。公園の価値は、いわゆる静かに過ごすだけではなくて、いろいろな使い方の可能性があるのではないかと。先ほどお話したギャザリングパーティーを横浜市庁舎の屋上でやったこともあります。

シェアすることによってお互いが価値をぶつけ合うことを許容する場が求められていると感じています。自分の家の庭を開くということも同種の行為ですが、都市空間もそういう目線で見ると、すごく身近な場所になるのではと思っています。

齊藤:シェアの価値は、公共的な知らない人と触れ合うということだと思います。普段の生活では、当然知り合いと会うわけなので。だから、自分の好きなことを家の中でやるのではなくて、外に持ち出すことを、よく提案します。料理好きな人はキッチンを外に持っていったほうがいいよ、と。

庭の概念も外から内へとスライドする

河崎:「外」という概念をお二人はどのように捉えていますか。

西田:最近家を複数持つ人が増えてきていて、その中で特に「小屋」に興味があります。小屋の価値は、家ほど大げさではなく、好きな場所を自分の居場所に出来る気軽さです。例えば、見晴らしの良い山の中で紅葉が眺められるとか、この時季にここに行くと美味しい魚が食べられるとか。生産性が求められる時代には、あまり気にされていなかった自然浴な価値です。それより東京に住んでいたほうが便利だよね、と。しかし、自分の生活に何を取り込むかを考えている今のような時代だと、その時季にそこに行けるというのは大きな価値になります。それは、庭=外の自然で、自分の家は小さくても取り込んでいる価値が大きいことを指しています。

齊藤:庭、外という空間は自分でつくれる数少ないもののひとつだと思っています。建物を変えるのは少し難しいけれど、庭は何でもできる場所だと思っています。自分のセンスや自分の興味をそのまま形にしていける場が庭や外なので、自分でつくるものだと思っています。外のものごとが中に移行していて、中のものごとが外に移行している時代のように感じています。

先ほどのオフィスの話に戻りますが、室内で畑を作りたい、今までは飾りたいと言っていたのが育てたい、とオフィスのオファーも大きく変化してきています。ここでも、内と外がスライドしているという印象はあります。

テーマ④自然とライフスタイルの理想的な関係性とは?

河崎:続いて、これからお二人が目指される自然とライフスタイルの関係についてお聞かせいただきたく思います。

どこでも仕事ができる時代、住まいの選択肢は?

齊藤:どこにいても仕事ができる時代になってきていると思います。場所にとらわれず、山の中でも都会の仕事はできるでしょう。日々忙しい、ドアトゥードアみたいな生活でなく、例えば畑をやるというような、自然の恵みも取り入れて仕事をする人が増えていくと、より豊かで幸せな世の中になるのではないでしょうか。

西田:齊藤さんの話を聞いていて思うのは、オフィスも家に近づいてきているということ。今までオフィス産業だったものも住宅産業側に近づいてきたり、家で仕事ができるようになってくると、逆に、今まで住宅産業でしかなかった家が、オフィス産業との垣根がなくなり、産業構造自体にもかなり大きく影響があるのではないかと思います。

垣根がなくなると、オフィスが住宅らしくなり、住宅がオフィスらしくなっていきます。産業構造のハイブリッドがすごく起こりやすいというのは感じますね。

テーマ⑤住宅という固定化されたものの価値は変化するのか?

河崎:住まいは、基本的に固定化されていると思います。月曜日はここに住み、火曜日そこに住むということは現状は難しい。そうしたとき、住まいは、これからどうあるべきなのでしょうか? 住環境の価値はどういうところにあるのでしょうか?

自然に浴する人間の欲求が固定化を変容させる?

齊藤:頻繁に移動が起こると思っています。固定化しなくていい時代になると考えています。小さな小屋みたいな家がいっぱいあったらいい、と思っています。そのほうがオンオフは明確になりますし、季節に合わせて移動すればいい。畑で仕事をしながらクリエイティブなことは問題なく考えることができます。

必ずしも植物や何かがあることが自然とは、実は捉えていません。確かに僕自身は外にばかりいますが、自然という言葉の意味は、大自然の森に代表される自然ではなくて、人が移動するとか、そういう人の行為自体も自然と言えるのではないでしょうか。人間の本来持っている本能に従うことも、自然だと考えています。外に出ることだけはない自然を自分は探し求めています。

西田:“自然浴”の浴って、普通に考えたら森林浴的な浴びるという意味だと思いますが、欲求の“欲“でもありますよね。食欲とか睡眠欲みたいな欲求と同じように、元来人間は持っているもので、夏になったら暑い、冬になったら寒い、五感がそれによって研ぎ澄まされるという欲求であり、非常に面白いと思います。

AIに様々な事柄を託す方向に世の中が進んでいる中で、コントロールできない自然の動きを、自分の暮らしや生き方に取り入れて持つというのは、大きな価値ですし、人間の欲求なのではないかと感じています。

プロフィール

株式会社DAISHIZEN 齊藤 太一

2011年、SOLSO architectural plant farmを設立。高校生の頃から造園、野菜生産、山野草の採取を学美、園芸家として活動。話題の施設の空間プロデュースを始め、隈研吾氏や中村拓氏ら有名建築家とのコラボレーションも。「SOLSO FARM」のほか、日本各地でグリーンを取り入れた商業施設やオフィス空間を手がける

オンデザインパートナーズ(株)西田 司

横浜国立大学工学部建築学科卒業後、スピードスタジオを設立し、共同主宰となる。2004年にオンデザインパートナーズ設立。2012年には「ヨコハマアパートメント」で日本建築家協会新人賞、「ISHINOMAKI 2.0」でグッドデザイン復興デザイン賞など受賞多数。一級建築士。東京理科大学、日本大学、非常勤講師。大阪工業大学客員教授。

Text:石角友香
Photos:大石隼土