自然浴生活 SPECIAL SITE

SHARE

PROFESSIONAL

2018.09.28

株式会社 奈良規松緑化・取締役社長 松本 孝一さん【前編】

空間に調和を、人の心に平和をもたらしてくれる自然

SHARE

空間に調和を、人の心に平和をもたらしてくれる自然
日々の暮らしや住空間に物足りなさを感じているなら、それは“お庭”で解決できるかもしれません。天気に関わらず洗濯物を干せる場所が欲しい、日当たりのいい場所でくつろげる時間が欲しい、家庭菜園に挑戦したい、雑草対策など手間のかからないお庭にしたい……。お庭を活用して、自然を取り入れた豊かな生活を送るためのヒントを日本各地のお庭づくりのプロフェッショナルに伺いました。

株式会社 奈良規松緑化は、奈良県生駒市のエクステリアパーク コンパスや、奈良県奈良市のガーデンパレットといった“体験できるショールーム”を持ち、実際に素材を見たり、触ったりしながらアイデアを出し、お庭づくりを進めていくきめ細やかなお仕事が多くのお客様から支持されています。その取締役社長を務める松本 孝一さんは、奈良や大阪エリアの方々に、ご家族のライフスタイルに合ったオンリーワンなお庭づくりを提案しています。

心動かされた日本各地の美しい景色

「『お庭をつくろう』と相談にいらっしゃるお客様は、夫婦仲が良かったり、幸せそうだったりする方々が多いので、そういう方々と会って話す楽しさがこの仕事の魅力です。ご相談を受けながら『今度子どもが生まれます』『クルマを買います』というお話を伺って、『でしたら、こうしたお庭にすると楽しいですよ』とその方の暮らしをサポートできるのが、私のやりがいになっています」

流ちょうな語り口でそう語ってくれる松本さんが最初に自然や緑の魅力を感じたのは、まだ小さい頃、転勤族だったお父様の仕事の関係で日本各地を転々とする中で出会った、全国の美しい風景でした。

「小さい頃住んでいた家の横には広大な平原があって、そこが一面クローバー畑になっていました。ある日、しゃがみこんで四つ葉のクローバーを探すのに夢中になっていたのですが、ふと顔をあげたときに、目の前に延々と続くクローバー畑の風景に魅了されたことはよく覚えています。それから、奈良にはススキで有名な曽爾高原があって、そこは『黄金色の絨毯』と呼ばれています。そこで見たススキの平原もとても思い出深いものでした。父親の転勤先によっては、海を見に行くこともありましたね」

中でも最も印象深い場所として記憶に残っているのは、静岡県浜松市の遠州浜。そこは現在も機会があるごとに訪れる、お気に入りの場所の一つだと言います。

「今は内陸県の奈良に住んでいることもあって、海や湖のような場所はとても懐かしく思い出します。一時期住んでいた浜松の中田島砂丘や遠州浜の景色は本当に好きですね。海岸線の長い遠州浜は左を向いても右を向いても見渡す限り地平線が続いています。そして、その後ろには松林が延々と続いている……。その光景はいまだに目に焼き付いています」

空間と心に調和をもたらしてくれる自然

とはいえ、お庭への興味は、今のお仕事をはじめた時点でもそれほど高くはなかったのだと、松本さんは続けます。幼少期に絵を描くことの楽しさに気づいた松本さんは、その後芸術系の大学に進学。そこで偶然、造園/ランドスケープデザインを専攻したことが、今の仕事につながっていきました。

「今となれば恥ずかしいことですが、その時点では造園やエクステリアを志してこの仕事を始めたわけではありませんでした。むしろ、『お酒を美味しく飲むためには働かなければいけないぞ』というのが主な動機だったのです(笑)。ただ、今思うと、小さい頃に目に焼き付けた光景が今の仕事につながっていた部分はあったのかもしれませんね。例えば、一度京都の大原三千院に雪景色を見に行ったときに、先に来た誰かの足跡がついていたので、『足跡のない雪景色を見たい』と、雪が降る前日から京都に向かったこともありました。そういう意味では、もともと自然が生み出す美しさへのこだわりが強かったのかもしれません。ただ、それは全て、後になって振り返ってみると偶然つながっていた、という感覚です」

偶然に導かれるように現在のお仕事に就いた松本さんは、その後様々な経験を積む中で、お庭の魅力を発見していったそうです。中でも重要な気づきとなったのは、「暮らす人のライフスタイルにあったお庭を提供する大切さ」。それは現在に至るまで、松本さんのお仕事の核となる想いとなっています。

「私たちの仕事は、工業製品ではなく一つひとつ手づくりで進めていくものなので、その際に『調和をもたらすもの』という意味でも、緑の存在の大きさを感じました。緑があることで、その空間がかっこ良くなりますし、丸みのある空間に仕上がります。心にも優しいものになりますよね。とはいえ、なぜその方が自然を求めるのか、また、どんな自然を求めているのかということを、丁寧に伺っていくことが大切です。『自然を楽しみたい』と言っても、実際に動植物に囲まれて過ごしたい方もいれば、緑は欲しいけれども、虫は絶対に嫌だという方もいます。また、今の時代、バーベキューはクルマを少し走らせればできる場所があるわけですから、家で頻繁にやらない場合は、キャンプ場などに行く方が快適かもしれません。その方が生活していく中で本当に必要なものを整えることが大切なのです」

お庭は家族のためのプライベートな空間に

お庭でできることは多岐にわたります。だからこそ、日々の生活をより充実したものにするためには、そのご家族にあったものを選ぶことが重要です。また、時代によって人々のライフスタイルは変わります。それを従来のものさしで簡単には判断しないことが、豊かな生活につながると松本さんは言います。

「最近はお庭を近隣の方々とのコミュニケーションの場にするのではなくて、家族のプライベートな空間として楽しみたいという方も非常に増えています。その方がそういう生活を望んでいるのであれば、それに合ったお庭をつくることが重要です。お庭は家を建てる際に建ぺい率の関係で必ず生まれる空間ですから、自然に積極的に触れたい方にも、そうでない方にも、それぞれに合ったお庭の活用法を提案したいと思っているのです。中には『庭をどうにかしたい。でも、何をすればいいかわからない』という方も多くいらっしゃいます。ですが、基本的に『庭で何をするか』というビジョンがお客様自身にないと、いいお庭にはなりません。ですから、あくまで実用的な選択肢を提示することで、そこで過ごすお客様にとってより良いお庭やガーデンルームを実現したいと思っています」

幼少期の松本さんが絵を描くことや様々な風景に魅せられていたように、自然や緑との関わりや、そこに感じる魅力は、人それぞれに違います。そうした違いを的確に汲み取って、その方たちのためだけのお庭をつくっていきたい──。ときに冗談を交えながら朗らかに語ってくれた松本さんの言葉は、その奥に力強い信念のようなものが感じられるような雰囲気が印象的でした。

「お庭をつくりたい方、ガーデンルームをつくりたいという方には、何より家族で楽しい団らんを過ごしていただきたいと思っています。例えば、離れのような場所は一人になるためのスペースですが、お庭はそれとは違って、ご家族のコミュニケーションが生まれる場所です。実際、うちでお庭をつくらせていただいたご家族を見ていると、お子さんがとても楽しそうにお庭で過ごしている姿を見かけます。その方たちだけのオンリーワンな場所として、お庭を楽しんでもらえたら嬉しく思っています」

後編ではお庭づくりに際しての具体的なポイントを挙げていただきながら、お庭のある豊かな生活についてお話しいただきます。

プロフィール

松本 孝一

1973年生まれ。株式会社 奈良規松緑化取締役社長。幼い頃より父親の仕事の都合で大阪、奈良、静岡と各地を転々とする。体を動かすことが好きで、静岡では漕艇部に所属していた。高校進学と同時に奈良へ転居。美術を専攻し、かなりの数の寺社仏閣に足を運ぶ。卒業後は大阪芸術大学に進学し、造園の世界に携わることに──。近年は展示場を開設するなど、お客様の庭づくりのお手伝いにより精力的に取り組む。


HP:http://exterior-compath.com/

Text:杉山 仁
Photos:大石 隼土