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2018.09.07

グリーンライフ産業株式会社・代表取締役 中村 太郎さん【前編】

自然を見て、感じて、心を解放する。それは豊かなコミュニケーションの生まれる場所

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自然を見て、感じて、心を解放する。それは豊かなコミュニケーションの生まれる場所
日々の暮らしや住空間に物足りなさを感じているなら、それは“お庭”で解決できるかもしれません。天気に関わらず洗濯物を干せる場所が欲しい、日当たりのいい場所でくつろげる時間が欲しい、家庭菜園に挑戦したい、雑草対策など手間のかからないお庭にしたい……。お庭を活用して、自然を取り入れた豊かな生活を送るためのヒントを日本各地のお庭づくりのプロフェッショナルに伺いました。

福岡・佐賀・熊本など北九州地域を中心に国内16店舗以上を構えるガーデンエクステリアの専門店「グランド工房」を運営するグリーンライフ産業株式会社。その代表を務めるのが、中村 太郎さん。お父様に当たる創業者・中村 和男さんの事業を引き継ぐ形で2012年に代表取締役に就任すると、関東にも店舗を拡大し、多様な人々のお庭づくりをサポートしています。そんな中村さんが緑や自然の魅力を知ったのは、先代が事業を行っていた小学生の頃。そのときの思い出が、現在につながったと言います。

誇らしき家業。お庭は自然と触れ合い、心を解放する場所。

「私の場合、父親が造園業を営んでいたこともあり、小さい頃から植物や自然に触れ合う経験は多かったと思います。今でもよく覚えているのは、私が小学校3年生頃の話です。通っていた小学校の30周年記念行事で、学校の土手に植樹することになりました。そこで父親が職人さんたちと一緒に、トラックいっぱいに木の苗を積んで小学校に持ってきました。そのとき、『太郎のお父さんが来た!』と学校の友達に言われ、とても嬉しかったのをよく覚えています。また、私は小さな頃から、よく父親の仕事の現場にも連れていってもらっていたんですよ。父親や母親からよく仕事の話を聞いていました。その頃からずっと、自分はこの仕事を継ごうと思っていました」

先代・和男さんの背中を見て成長した中村さん。幼少期を過ごした自宅のお庭は、中村さんの成長に伴い変化しながら、時に自然と触れ合い、時に人々との交流の場となっていました。

「父親が初めて家を買ったのが、私が小学校1年生の頃でした。広い敷地ではなかったのですが、とても嬉しかったのが、お庭に植えられた三本の欅(けやき)の木です。芝生もきれいに整えられており、子どもの頃はよく遊んだものです。その後、私たち兄妹が成長してお庭で遊ばなくなると、そこをウッドデッキに変えて、近所の方々を呼んだり、社員さんを呼んで、バーベキューをしたりするようになりました。そういえば、こんなこともありました。ウッドデッキをつくる際に発生する大量のおがくずのことで、ご近所の方から作業中の大工さんにクレームが入ってしまったのですが、その後ウッドデッキが完成すると、父親はそのご近所さんと大工さんを招き、和解もかねたバーベキューを企画したのです。結果的にその集まりは大成功。ご近所の方も上機嫌でギターの弾き語りを披露してくれて、大いに盛り上がりました。お庭という開放的な空間で、お互いに素直になることができたのかもしれません」

人が常に持っている「緑や自然に触れたい」という欲求

お庭があることで、自然を身近に感じられる生活が実現する。あるいは、人々との交流のきっかけが生まれていく。中村さんは、自然のある生活は人間の根本的な欲求に関わるものだと語ります。

「緑や自然と触れ合うことが嫌な人は、そういるものではありません。ですから、『緑や自然に触れたい』という欲求は、人が常に持っている欲求の一つなのだと思います。そして、それが最近になって顕在化してきたということなのかもしれません。近年は“緑のある生活”がおしゃれなものとして受け入れられている面もあり、以前からお庭が好きな方や、ガーデニングが趣味だったという方ともまた違う、新しい価値観を持った方……“インテリアの一部”として植物を扱っている方も増えているように感じます。最近ではグリーンをおしゃれに取り入れたお部屋を展示しているインテリアショップも非常に増えていますよね」

  • こちらがグリーンライフ産業のオフィス。緑の溢れる開放的な空間でした。

そうした変化は、国外、特に欧米のライフスタイルからの影響も大きいようです。欧米では、家の中でできることをお庭でもできるようにすることで、より自然との距離が近いライフスタイルが定着しています。そして近年、そういったライフスタイルが徐々に日本にも浸透し始めているそうです。

「欧米では“リビングガーデン”や“アウトドアリビング”と呼ばれています。もちろん、敷地の広さや気候も違うので、そのまま日本に置き換えることはできませんが、一つ言えるのは、人々にとってのお庭の形が、“眺めるお庭”から、“人が活用することで活きるお庭”へと変化しつつあるということです。もちろん、眺めるお庭にはそれならではの良さがあり、日本庭園などはそうした魅力を追求したものです。けれども同時に、多くの人々の間では“自然を取り入れながら、そこで豊かに生活する空間”として、お庭が捉えられ始めているように思います」

提供するのは“家族の幸せな空間”

お庭は人々のライフスタイルだけでなく、人と人とのつながりまでを変えるもの。だからこそ、しっかりと整えることで、毎日の生活はより豊かなものへと変化していきます。

「これは創業者が生前に何度も言っていたことですが、うちのお客様の中に、娘さんとの関係がうまくいっておらず、親子の会話が全くない方がいたそうです。ですが、うちでお庭を整えられたところ、娘さんがお庭に出るようになって、それがきっかけで家族の会話や団らんが生まれたそうです。創業者はその話を、本当によくしていました。つまり、私たちが直接提供しているのはエクステリアだとしても、最終的に提供するのは“ご家族の幸せな空間 “だということです。最近では、うちに面接に来る新卒者の中にも、『ウッドデッキのある家に育ったので、それを仕事にしたい』という人が増えてきました。ウッドデッキのあるお庭で育ち、その価値を実際に体感して知っている世代が社会に出てくる、そういう時代が来たのです。そうした変化も踏まえながら、メンテナンスも含めて、お庭のある住空間をサポートしていきたいと思っています。また、ご家族の生活の変化によって、最適なお庭の形は変わりますから、お客様のライフスタイルに合わせてお庭の形を変えていくサポートもしていきたいです」

幼い頃から感じてきたお庭や植物のある生活の魅力を、現在はグランド工房を通して様々な人々に提供している中村さん。人々の幸せをサポートしたいと語る口調は、優しさに溢れるものでした。

「小さい頃、妹と一緒に“自然教室”に連れて行ってもらったのを覚えています。そこで体験したキャンプファイヤーや川遊びはとても楽しいものでした。自然や緑の魅力というと、一つは目で見て美しいな、かっこいいなということです。そしてもちろん、緑を浴びる、感じる魅力もあります。小さな子どもにとっても、自然の中で遊ぶのはとても気持ちのいいことで、私の子どもも緑が多い公園に行くと、喜んで走り回ります。人間の本能的な喜びや欲求に関わってくるのが自然の魅力であり、その幸せが溢れるような空間をつくることが、私たちの仕事であると感じています」

後編ではより具体的に、お庭づくりのアイデアや注意するべきポイントなどをお話しいただきます。

プロフィール

中村 太郎

1974年生まれ。グリーンライフ産業株式会社 代表取締役。東海大学経営学部卒業後、ゼネコンに就職。2001年エクステリア&ガーデンアカデミー卒業後、家業であるグリーンライフ産業株式会社に入社。2003年取締役営業本部長、2005年常務取締役を経て2012年代表取締役に就任。


HP:https://www.ground-f.com/

Text:杉山 仁
Photos:次村 昭也