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2018.09.14

アウテリアタイガー株式会社・代表取締役 倉沢 高幸さん【前編】

風を感じる、光を浴びる。ただそれだけで人は元気になれるから

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風を感じる、光を浴びる。ただそれだけで人は元気になれるから
日々の暮らしや住空間に物足りなさを感じているなら、それは“お庭”で解決できるかもしれません。天気に関わらず洗濯物を干せる場所が欲しい、日当たりのいい場所でくつろげる時間が欲しい、家庭菜園に挑戦したい、雑草対策など手間のかからないお庭にしたい……。お庭を活用して、自然を取り入れた豊かな生活を送るためのヒントを日本各地のお庭づくりのプロフェッショナルに伺いました。

熊本県内で住宅のお庭や外構を手がけ、今年で創業58周年を迎える「OUTERIOR TIGER(アウテリアタイガー)」。ホームページには100件を超えるお客様の体験談を踏まえたお宅紹介が掲載。その事実からも、地元に愛されている様子が窺えます。同社の代表取締役・倉沢 高幸さんが考える自然のある暮らし、お庭の良さとはどんなものなのでしょうか?

砂場で学んだコミュニケーション力、創造力

熊本生まれ、熊本育ちの倉沢さん。

「子どもの頃から川や田んぼ、近所のお宮で土を掘ったり、林の中でかくれんぼをしたりしていたので、自然の中で過ごすという経験は身についているんでしょうね」

自然の中で多少、危険な目にも会いながら遊びの中で実感したこと。それは時代が変わっても普遍的なものでは?と倉沢さんは“砂場遊びの重要性”を説きます。

「最近は公園から砂場がどんどん姿を消していますが、自分は砂場肯定派なんですよ。砂場って子ども達のコミュニケーションと創造力を高める場所だと思うんです。歳も男女もバラバラ。でも誰かが水を汲んできたり、砂を掘ったり、協力してトンネルを作ったりしている。そこにはおのずと砂や土、水といった“自然”に触るという面がありますよね」

衛生上、外の公園に砂場を求めるのが難しくなった今、庭に砂場があることは時代にもマッチしていると言えそうです。子ども同士のコミュニケーションにとどまらず、若い子育て中の家族にとっても、親も童心に返って子どもと触れ合える場所になります。花壇や砂場、芝生といった庭にある自然はある意味、年齢に関係なく、人の気持ちを豊かにしてくれるものなのでしょう。

日々の暮らしの中にリセットボタンを押せる場所を

倉沢さん自身が、今、現在、日常の中で自然の心地良さを感じるのは「庭の水撒き」。子どもの頃、夏休みのお手伝いで経験した人も多いのではないでしょうか。

「疲れた時や煮詰まった時に水撒きをするといいんですよ。シャワー効果というか、滝から出るマイナスイオンじゃないですけど、“無”になれてスキッとします。それに生き物に“生”を与えているような気持ちになって、いいことをしている、そんな効果があると思います。昼間の暑い時には、草花はしおれているじゃないですか?それが夕方、少し日が陰ってきて水をやると、ものの5分ぐらいで生き生きしてきますよね。それは本当に気分転換につながります。庭があれば、それが手軽にできるのです」

大げさなことではなく、日常の中に自然を取り込む。それが倉沢さんが考える自然浴生活にもつながってきます。

「家の中は間取りがあります。リビング、ダイニング、寝室、お風呂、トイレ。全部必要性があるものばかりで、決められた部屋ばかりですよね。そう考えると庭というのはどう使うのか決まっていない自由な場所です。住む人のライフスタイルによって変化し、また一つの住宅の中で一番自然に近いところです。庭に一歩出ることで、日の光を浴び、風を感じ、鳥の声を聞く、それが自然浴生活をしていることだと思うのです。日々の生活の中に少しの時間でもゆとりや楽しみが入っているだけで、心身ともに違ってくるような気がしませんか?庭があれば、わざわざお金と時間をかけて出かけなくても、毎日ちょっとしたことでリセットもできますからね」

ご自身は仕事で自然に関するライフスタイルに向き合い、お客様のニーズをつかみ、理想を実現化しているぶん、休日はむしろ「引きこもり」だと笑う倉沢さん。多忙な働き盛り世代は共感するところも多いのではないでしょうか?

風を感じる、光を浴びる。自然を感じる生活が家族を笑顔に

今回の取材場所となった展示場がオープンしたのは、倉沢さんがアウテリアタイガーに入社した5年後の1995年のことですが、そのとき、その後の倉沢さんの庭づくりに対するスタンスを決定づける出会いがありました。PRのために配布したチラシを握りしめて展示場を訪れたとある三世代のご家族です。

「お話を聞くと、おじいちゃんが膝を悪くされて外に出られなくなり日に日に元気がなくなっていくのを心配されていて。なんとか外に出てもらいたいとのご相談でした。翌日お宅に伺うと、古いお宅で庭もそんなに広くないのですが、そこにガーデンルームを付けたいとおっしゃって。庭側は昔でいう柱立てのバルコニーだったので、そこに施工すると雨が漏るかもしれませんが?とお話ししたのですが、それでもいいからとお願いされました。施工後にアフター訪問したところ、おじいちゃんがガーデンルームにご近所の方を呼んで囲碁や将棋をされていました。冬も暖かいのでそこで過ごす時間が多くなり、どんどん元気になってきたとご家族はとても喜ばれていたんです」

                                                                               

当時20代だった倉沢さんは、庭が人にもたらす影響を見出し、この経験がご自分の仕事の原点になったと言います。

                            

「そこにはデザイン性も何もないんですよ。ただ庭に出ると風があり、光を受ける。そんな空間があることでご近所とのコミュニケーションの場になる。庭には人を元気にする力があるのだなということを、身をもって実感しました」

家の中と外の境界を意識しないライフスタイル

5年前に、お客様の声を直接伺う現在のスタイルに完全移行したアウテリアタイガーですが、その背景には、人々の住まいや暮らし方に対する意識の変化がありました。その頃には、お庭を始めとしたエクステリアをもっと大事にしたいという志向が強まり、元からある住宅を活かしながら、自分たちらしくリフォームする人々が増えてきていました。また、家の中と外という境界を意識しないライフスタイルが浸透してきた時期でもありました。

「地元・熊本において、この展示場やホームページなどを通じて、ライフスタイルに庭を取り入れることの大切さは発信していますね。ただ、新築時のご依頼の場合、施工時期については外構とガーデンとは切り離して考えて頂くようお伝えしています」

「門や塀、ガレージなどの外構部分は、防犯対策も含め生活必需品として家が建つと同時に必要性がある仕事です。でも、庭はそうではありません。プラスαの付加価値の部分なので、必ずしも必要なものではありません。日本には四季もありますし、1年ぐらいは生活された中で、本当に必要なものはどういうものなのか?暮らしていく中で、そのご家族のライフスタイルにあったご提案をするように心がけています」

新築時から絶対に必要なものというより、各々の家庭のライフスタイルから導かれる最適な庭のあり方に重点を置いているので、現在では庭のリフォームに力を入れているというお話も納得です。


後編では、自然を取り入れた暮らしのための庭づくりの具体的なアドバイスを豊富な事例とともにご紹介していきます。

プロフィール

倉沢 高幸

1967年生まれ。アウテリアタイガー株式会社代表取締役。エクステリア資材商社から、1990年に同社へ営業として入社。ハウスメーカーの担当も兼ねながら、1995年に一般顧客向け展示場運営にも携わる。1998年に取締役に就任すると、営業本部長として現在の一般顧客向けビジネスの基盤をつくる。その後2002年に代表取締役に就任し、現在に至る。


HP:https://www.outeriortiger.co.jp/

Text:石角 友香
Photos:松嶋 仁