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2018.10.19

アウテリアタイガー株式会社・代表取締役 倉沢 高幸さん【後編】

そこに暮らす人のライフスタイルと共に変化する庭づくりを

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そこに暮らす人のライフスタイルと共に変化する庭づくりを
日々の暮らしや住空間に物足りなさを感じているなら、それは“お庭”で解決できるかもしれません。天気に関わらず洗濯物を干せる場所が欲しい、日当たりのいい場所でくつろげる時間が欲しい、家庭菜園に挑戦したい、雑草対策など手間のかからないお庭にしたい……。お庭を活用して、自然を取り入れた豊かな生活を送るためのヒントを日本各地のお庭づくりのプロフェッショナルに伺いました。

熊本県内で住宅のお庭や外構を手がけ、今年で創業58周年を迎える「OUTERIOR TIGER(アウテリアタイガー)」。前編では代表取締役の倉沢 高幸さんの、庭づくりの仕事の原点となった経験や、これからの時代における自然浴生活の意義をお話いただきました。後編となる今回は、お客様から寄せられたお悩みとその具体的な解決策などを紹介していきます。

新築時にお庭はどうすべきか?

前編でもお話しいただいたように、庭とは、門や塀、ガレージといった生活必需品的な外構部分とは異なり、新築時に必ずしも必要ではなく、むしろ四季を通じて生活する中で、各々のご家庭に必要なものが見えてくる、そのような空間だと話してくださった倉沢さん。

「庭は新築時の“セット”ではないと思っています。例えば最初からウッドデッキやテラス土間をセットされた新築の家を購入されたお客様にお話を聞くと、正直なところ、全く使えていません、と言われることが多いですね。もう少し大きかったら、お友達を呼ぶスペースになったのだけど……と。規格サイズで取り付けてしまった結果、逆にリフォームする際に解体するという無駄やリスクも発生します。将来のことやそのご家族のライフスタイルを考え、そのご家族にとってより良いお庭をつくるには、一年ぐらい生活をされる中で必要なものが見えてから考えられることが大切だと、ホームページなどを通じて発信しています」

そして、新築となると予算における心理的な負荷も当然、少なくありません。

「まず、庭は後からにしましょう、とお伝えします。新築時はどうしても予算に対する心理的なプレッシャーがありますから、そこに大きく使わずに段階を踏んだ提案をすることで、気持ち的に楽になっていただけるようなアドバイスもしています」

家族のコミュニケーションの場として、気持ちのリセットの場として

前編では、倉沢さんの仕事に対するスタンスを決定づけた、三世代同居のご家族のエピソードをお話いただきましたが、庭に関するお悩みは家族構成や世代によっても実に様々です。

「若いご家族で、庭に何もしていなくて草取りが大変なので、なんとかしたいというご相談がありました。手のかからないように、土の面をなくしてレンガなどで埋めてほしいというご要望でしたが、それだとちょっと面白くないと思ったんです。お子さんはもう庭で遊ぶ年齢ではなくなっていましたので、土の部分は花壇をつくって、あとはレンガを敷き詰めて、少しウッドデッキも設置しました。ちょうどガーデニング全盛の時代でしたので、奥様には『ご自分で花を植えてみてはいかがですか』とご提案しました」

その後、お宅を訪問すると夫婦間のコミュニケーションもお子さんとの時間も増えたという嬉しい報告が。

「お子さんが成長して自立するにつれ家族の距離も離れていく時期がありますよね。休みの日にお父さんが家に居づらいとか、お子さんも部活動や塾など忙しく、次第に家で過ごさなくなってくる。それが花壇をつくったことで、ご夫婦で雑誌を見て、『今度はこんな花を植えよう』と、お休みの日に園芸店に行く。そしてお花を植える流れで、日曜日には庭でバーベキューを企画。子どもたちにもちょっと早く帰っておいでと、家族が集まる時間が生まれたようです」

また、熊本のある会社社長のお宅では、当初、奥様が「実家の竹垣をなんとかしたい」と展示場を訪れたことがきっかけで、後日「自宅の庭をどうにかしたい」と今度はご主人を伴って相談に来られたお話も、庭という存在の特徴を示すエピソードです。

「庭全体をウッドデッキにしたいとおっしゃったのですが、それは大きすぎますよ、と(笑)。リビング前面にはウッドデッキを、その右側はロックガーデン風、左側はレンガで楽しい感じの庭にしましょうとご提案して、すぐご契約いただきました。こちらも後日訪問した時、奥様がおっしゃっていたのは、ご主人が仕事から帰られると、一旦リビングを抜けて庭に出られるそうなんです。5分ほどして部屋に入って着替えて食事をされるようになったそうです。それは多分、庭で気分をリセットされていたのだと思うんです」

倉沢さん曰く、奥様が展示場に相談に来られた際、ガーデンルームでコーヒーを飲みながら、何かを感じられたのかも?と言います。

「夕方に暮れゆく空を眺めながらデッキでコーヒーを飲むのもいいかもしれない、と我が家の庭を想像されたのかもしれないですね。最初は竹垣のご相談でしたが、今考えたら、自分が試されていたのかもしれませんが(笑)」

ライフスタイル、ライフステージによって変化する庭

より具体的な例で言えば、家の中のレイアウト次第で庭のつくり方も変わってくるということ。

「例えば庭に出る時、大半はリビングからだと思います。ではリビングの引き違いのドアがあった時に右側から出るのか左側から出るのかは、家の中のレイアウトで変わりますよね。ですから、そこもはっきりわからない中で庭はつくれないのです。加えて家の向きや気候、風の通り、さらにお隣のお家の間取りがどうであるとか、お隣の生活動線がどうなっているか?は住んでみないとわからないものです。色々な状況を踏まえ、実際に住んでみられた上で、庭をつくっていくのがベターだと思うのです。お客様の想いと私たちの知識とを掛け合わせて、そのお客様にとって一番良いと思うプランのご提案をするために、お客様にも積極的に庭づくりに参加していただきたいと思っています」

家のプロと庭のプロ。各々のライフスタイルを優先するにあたって、ある種の原点回帰が起こっているのでは?と倉沢さんは言います。

「元々は工務店さん、大工さんが家を建てたあとに門や車庫を設置し、さらにそれができたあとに造園屋さんが木を植え、庭をつくり……、時間をかけて満足のいくものをつくってきたのだと思います。もちろん、だからと言っていくらでもお金をかければいいという時代でもないですからね。お子さんが小さいお宅なら庭のどこかに芝や砂場を作って、子どもと一緒に遊べる場でいいのかなと思います。お父様もまだ若いし、元気なので、芝生の管理もできるでしょう。それが家族も年齢を重ねてくると、子どもも庭で遊ばなくなり、親も手をかけたくなくなる。そうなった時にガーデンルームなど、次の庭のあり方を考えればいいのではないでしょうか。だから庭は変わっていいような気がします。一回つくって終わりじゃなくて、家族のライフスタイル、ライフステージに合った形で変化していくべきだと思います」

庭がストレスに感じられたら、それは現状のライフスタイルに則していないということでしょう。生活に密接に結びついて変化していくのが庭という存在なのかもしれません。

庭で過ごす時間や空間こそが庭の価値

「“家庭”って、家と庭じゃないですか。どちらも大事なのです。今後、さらに女性が働くようになり、しかも働き方改革の影響で、決まった時間で、かつ仕事の量は減らさずに働く、という方向になってくると、ストレスが高まる気がします。お母さんが仕事から帰ってきて家事もして、寝て、また次の日も仕事に行くみたいなことでしょう?その忙しい日常の隙間に逃げ場をつくる、それも庭の一つの役割だと思うんです。たまには庭で買ってきたお惣菜を食べたっていいじゃないですか(笑)。外で食べるだけで気分も違いますからね」

働く場所でも家の中でもない、もう一つの居場所。それがこれからの庭という場所が果たす役割でもあり、今後、より大切な場所になってくるでしょう。

「当社のお客様で庭をつくらなければよかったという人は多分いらっしゃらないと思います。庭で過ごす時間や空間。庭そのものというより、庭の価値に対価を払う時代なのだと思います」

体験談コーナーに顔出し、名前出しOKで登場するお客様がすでに100件以上存在するOUTERIOR TIGER。あくまでもお客様目線の庭づくりは、熊本県人でなくとも参照したくなるものでした。

プロフィール

倉沢 高幸

1967年生まれ。アウテリアタイガー株式会社代表取締役。エクステリア資材商社から、1990年に同社へ営業として入社。ハウスメーカーの担当も兼ねながら、1995年に一般顧客向け展示場運営にも携わる。1998年に取締役に就任すると、営業本部長として現在の一般顧客向けビジネスの基盤をつくる。その後2002年に代表取締役に就任し、現在に至る。


HP:https://www.outeriortiger.co.jp/

Text:石角 友香
Photos:松嶋 仁