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2018.10.05

株式会社 タケウチ・代表取締役 竹内 靖晴さん【前編】

庭の博物館で自然の豊かさ、アウトドアリビングの気づきを体感する

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庭の博物館で自然の豊かさ、アウトドアリビングの気づきを体感する
日々の暮らしや住空間に物足りなさを感じているなら、それは“お庭”で解決できるかもしれません。天気に関わらず洗濯物を干せる場所が欲しい、日当たりのいい場所でくつろげる時間が欲しい、家庭菜園に挑戦したい、雑草対策など手間のかからないお庭にしたい……。お庭を活用して、自然を取り入れた豊かな生活を送るためのヒントを日本各地のお庭づくりのプロフェッショナルに伺いました。

熊本県熊本市に本社を置く株式会社タケウチ。その最大の特徴は、1,000坪を超える日本最大級のガーデンギャラリーを有し、庭の素敵さの“気付き”を提供していることです。ガレリアと呼ばれる“庭の博物館”を代表取締役の竹内 靖晴さんに案内していただきながら、自然を取り入れた生活の素晴らしさを交え、庭への深い想いをたずねました。

様々なガーデンデザインが楽しめる“庭の博物館”

熊本城の北に位置する熊本市北区。国道387号線、日田街道に面して建つのが、タケウチの本社機能も備えた「ガーデンギャラリータケウチ・ガレリア」です。それまでの約700坪のガーデン・エクステリア展示場を1,000坪超に拡張。竹内さんによれば「さらに内容を充実させた庭の博物館」として2017年11月にリニューアルオープンさせたそうです。

まず目を引くのは、国道に面した敷地の東側全域を貫く56メートルのゲートと、3階建てのガレリア本館より高く伸びたケヤキの木が十字で交わる骨太なシルエットです。ただし、それを武骨に感じさせないのは、凛凛と茂るケヤキを始めとした緑の配置や、優しいレンガ色の外壁をまとった本館との、配色を含めたトータルデザインの妙が利いているからです。

  • 長く美しいゲート、そして大きなケヤキが伸び伸びと佇む。

「ゲートは私がデザインしました。ケヤキをシンボルツリーに選んだのも自分です。地中に細かく根を張る木はよく育つ様子を表した“良樹細根”という言葉がありますが、私たち自身もお客様や地域に対してそういう存在になりたい。そんな願いを込めて植えました」

竹内さん自ら形にした56メートルのゲートの背後に“庭の博物館”が広がっています。国道からの正面入り口で最初に目にするのは、竹内さんが高級温泉旅館風と称した和風の門構え。道を進んでいくと、次々に独自のコンセプトを持った庭が現れます。さらにガレリア内に植えられた多くの樹木は、エリア別で記載されたプラントマップで、落葉樹/常緑樹の分類から種名まで詳しく確認することができます。多種多彩な庭の表情をつぶさに観察できる点で、まさに博物館と呼ぶにふさわしい内容です。

お客様の感情にダイレクトに触れることができる仕事

最初のガーデン・エクステリア展示場がオープンしたのは、タケウチの創立25周年を機に竹内さんが3代目社長に就任した1998年でした。当時の坪数は約400。その初期段階で仕上げた場所が今も残っています。

「思い出深いのはガーデンキッチンコーナーですね」

ガーデンキッチンとは、その名の通り庭で調理ができる器具とスペースを設けるデザインで、タケウチでは早くからバーベキューグリル等のガーデンキッチン用品を取り扱っていました。

  • ガーデンギャラリー内に設置されてあるガーデンキッチン。

「お嫁さんからのご依頼でした。車椅子生活を余儀なくされたせいで大好きな盆栽を触れなくなったお祖父様のための庭をつくれないかと。最初に取り掛かったのは、家のどこからでも車椅子のまま庭に降りられる設計です。そこには、すでにあったゴルフの練習用ゲージを取り払い、ガーデンキッチンを組み込んだ円形のコーナーを誂え、さらに雨の日でも利用できるようガーデンルームも備えました。なぜ円形コーナーにしたかというと、圧倒的に回数が少ないバーベキューのためではなく、お祖父様の盆栽をそこに並べていただきたかったからです。お引き渡しの時、そのお祖父様が涙ながらに握手をしてくださいました。そんな鳥肌が立つ経験をして、お客様の感情にダイレクトに触れることができるこの仕事は、なんて素晴らしいのだろうと思いました」

内と外につながりがある、自然を取り入れた生活

竹内さんの実父である益雄さんがタケウチを設立させたのは1973年。創業翌年にデザインパネルという外壁用資材を扱い始め、エクステリア事業に本格参入しました。

順調に業績が伸びていく中、益雄さんが50歳で急逝。大学で建築を学んでいた竹内さんが20歳の時でした。会社は実母のタカ子さんが二代目社長となり、竹内さんは大学卒業後にタケウチに入社。亡き父の意志を継ぐべく、がむしゃらに働いたそうです。

「最初の頃は、門扉や車庫で家を囲むのがエクステリアだと、そんな概念で仕事を進めていました。あれは20代の後半でしたか。ある時人から、“自然浴生活”を教わったのです。大まかに言えば、内と外につながりがあるというか、内と外を区別しない庭づくりの考え方。これには興奮しました。必ず生活の幅が広がると確信できたからです。そこから自分なりに自然浴生活を解釈して、アウトドアリビングというスタイルを確立させたのです」

そのアウトドアリビングに欠かせなかったのがガーデンルームだったそうです。

「我々がガーデンルームを通じてご提案したいのは、機能的な“モノ”ではなく、庭で暮らす楽しさという“コト”なのです。おそらくどなたにも、それがご自宅でなくても、庭で過ごした経験があると思います。夏にスイカの種を飛ばしたり、ビニールプールで遊んだり。私の父は、若い頃にアメリカ人相手のキャンプ場の仕事をしていた関係でサンドイッチづくりが得意で、よく庭の芝生の上で食べさせてくれました。そんな思い出が呼び覚ましてくれるのは家族の絆です。実は私も、自分の家族と出かける時には広い場所でサンドイッチをつくって楽しんだりするんですね。そうした絆は、おそらく自然と受け継がれるものなのでしょう。ですから私たちは、庭を通じて家族の絆を育みたい。それはアウトドアリビング、言い方を変えればオープンエアのリビングによってもたらすことができる。そう考えているのです。先の盆栽好きのお祖父様の案件は、後にその庭を3年間たっぷり楽しんでから亡くなったと聞きました。元はお嫁さんが家族の絆を考えてご相談くださったわけですが、そのお手伝いができるエンドユーザー、つまり一般のお客様のお仕事は、私たちにとってもこの上なく楽しい。そこに産みの苦しみがあっても、百人百様、それぞれの夢や希望を一つひとつ形にしていけるのですから」

ガレリアは自然浴、アウトドアリビングの気づきを体感する場

ここまでお話を聞けば答えは推して知るべしですが、あえてたずねてみました。国内最大級の庭の博物館をつくったのはなぜでしょう?

「庭の素敵さ、その気づきの体感・体験の場にしていただきたいからです。やはり実物を見るほうがわかりやすいですからね。プラントマップを用意してガレリア内の樹木の名前がわかるようにしたのも、自然浴生活、アウトドアリビングに欠かせない木がどのような姿で生えるかを確認していただくためです。そうした木々の間を吹き抜ける風の心地良さ。池や滝を流れる水の音。庭が私たちにどんな安らぎを与えてくれるか、ぜひここで感じてください。もちろん無料です」

さて後編では、庭を通じて家族の絆を育みたいと語った竹内さんに、庭づくりのアドバイスをお聞きします。広大なガレリアをつくった方なので、様々なアイデアも必ずや壮大さに満ちていることでしょう。

プロフィール

竹内 靖晴

1958年生まれ。株式会社タケウチ 代表取締役。創業者である父の急逝に伴い、大学在学中から同社へ入社。建築学部生として設計業務に従事した後、工事業務、営業業務を経て、1996年に代表取締役に就任。2016年には創業45周年事業として本社展示場の大規模リニューアルを敢行。「ガーデンギャラリータケウチ“GALLERIA”」と名を改め、来たる50周年に向け、庭空間から始まる上質な暮らしのアイデアを発信し続けている。


HP:http://www.takeuchi-aoi.co.jp/

Text:田村 十七男
Photos:大石 隼土