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2018.09.28

株式会社 藤照・代表取締役 六本木 正さん【前編】

ヤシの木から生まれた、自然への想い。どんな依頼も自分の家だと思ってプランニングに臨む

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ヤシの木から生まれた、自然への想い。どんな依頼も自分の家だと思ってプランニングに臨む
日々の暮らしや住空間に物足りなさを感じているなら、それは“お庭”で解決できるかもしれません。天気に関わらず洗濯物を干せる場所が欲しい、日当たりのいい場所でくつろげる時間が欲しい、家庭菜園に挑戦したい、雑草対策など手間のかからないお庭にしたい……。お庭を活用して、自然を取り入れた豊かな生活を送るためのヒントを日本各地のお庭づくりのプロフェッショナルに伺いました。

群馬県高崎市で活躍する株式会社 藤照。外構やお庭だけではなく、造成工事など大掛かりな施工も得意とする中で、非常にユニークなのは、ヤシの木を始めとする植木の販売を行っていることです。その風変わりな展示販売場でお話をお伺いしました。

「ヤシの木にはそれぞれ顔かたちがあります」

2007年の設立から11年を経た、群馬県高崎市の藤照。外構やお庭以外に、造成、解体、上下水道、塗装といった大掛かりな工事も請け負いますが、特筆すべきは関東全域に向けたヤシの木の展示販売です。代表取締役の六本木 正さんに案内されるまま本社ビルの裏側に進むと、そこが植木の展示場。大小様々なヤシの木が生い茂った様子は、ちょっとしたジャングルの風情。いきなり南国ムードに包まれます。

  • 植木の展示場。一歩足を踏み入れるとそこは南国ムード漂うお庭でした。

「友人がヤシの木の販売を始めたので、私も実物を見せさせてもらったら、リゾート感漂う姿に惚れ込んでしまいました。買い付けは、有名なテーマパークにも卸している宮崎県の市場で。パッと見ではわからないかもしれませんが、それぞれに顔かたちがあるんですよね。そこがヤシの木の面白いところです。これは斑入り(ふいり)と言って、緑の葉の中に別の色が混ざった珍しい種類です。もちろん売り物ですが、このままここに残してもいいかなあと思うくらい気に入っています」

大きな葉を見上げて話す六本木さんを見ていると、植物園の園長に説明を受けているような錯覚を起こします。それらヤシの木を始めとする植木は、施工と設置まで込みの単体販売が行われますが、言うまでもなくガーデンプランに盛り込む要素としても活用されています。

ヤシの木から生まれた外構の依頼

ヤシの木の説明を一通り終えた六本木さんから、さらなる次の案内が。「私の庭もご覧になりますか?」。またしても促されるまま植木展示場の先にあるご自宅へ。

「ここでは、小さめのヤシの木と、細長い葉が特徴的なドラセナ。それから青みがかったソテツを。枝垂桜も数本植えてあります。植物にご興味を持たれるお客様には、自宅の庭も参考にしていただきます」

実際に人の営みがある庭を観察できるのは、ガーデンプランを考える上で絶好のサンプルとなるでしょう。しかし、庭に大きな木を植えたいというリクエストはどれ程あるものなのでしょうか?

「ヤシと一口に言っても、30mに達する木から手のひらサイズまで多種多様です。ただ、一般的にはたった一本でも巨大なシンボルツリーになり得るイメージを持たれるのがヤシの木ですから、現実的にご自宅の庭用というご要望はさほど多くはありません。でも、こんなことがありました。東北大震災が起きた年、ウチの植木展示場をご覧になった高崎市内のお客様の庭に、地震が起きる一週間後にヤシの木を植える予定がありました。当然、予定はキャンセルとなりました。しばらく間を置いてから施工したのですが、その間にお客様が単体で植えるヤシの木に合う外構にしたいとお考えになり、新たな発注を頂けることになったのです。ヤシの木の販売と外構やお庭の仕事は別物だろうと思っていましたが、何がどう幸いするかはわからないものですね」

この仕事はお客様に喜んでもらえる嬉しさがある

ヤシの木発の外構依頼を受けたのは、藤照ができてから4年後のことでした。六本木さんによれば、当時は外構やお庭のことを学んでいた時期だったそうです。

「親がやっていた土木方面の仕事が私の出発点で、藤照の前は公共工事を中心に土木工事に携わっていました。その頃からセメントやブロックを扱っていたことと、季節に関係なくできる仕事ということで外構とお庭も事業内容に取り入れたのです。しかし、デザインについてはほぼゼロベースだったので、そこは建売住宅の仕事をさせてもらいながら必死で勉強しました。そうこうするうちに、門柱や花壇、アプローチの依頼が個別で入るようになり、間違って自信を持ってしまい、今に至っている次第です。でも、この仕事を続けられているのは、お客様に喜んでもらえる嬉しさがあるからですね。大規模な工事とは異なる充実感が得られます」

六本木さんが勧める、庭に植えたい和の木

堂々たるヤシの木の展示販売場を持つ六本木さん。であれば自然浴生活を楽しめる庭づくりにおいても、緑は欠かせない要素と考えているのでしょうか?

「やはり、多少の緑が入ったほうが庭に良いイメージを与えられます。特に暑い夏場は、木々の葉によって涼し気な印象になります。手入れが大変だと思われる方が少なくありませんが、種類を選べばある程度の手間は省けるんですよ。ウチはヤシの木だけでなく、和の木も取り揃えていますから、ご希望に沿う種類をお見せすることができます」

そこで、ヤシの木以外でお勧めの木を六本木さんに選んでいただきました。

「まずはシャラです。ナツツバキとも呼ばれるこの木は、初夏に椿によく似た白い花をつけ、秋になると紅葉するので、季節感が楽しめます。ソヨゴは常緑樹で、冬でも葉が青々としています。あまり大きくならず、手入れが楽。木に雄と雌があり、秋が深まると雌の木に赤い実がなります。最後にヤマボウシ。これも常緑樹で、初夏に白い花(総苞片)を咲かせ、秋になると赤い実をつけるのはソヨゴとよく似ていますが、葉の形が楕円形なのが特徴です」

やはり六本木さんの解説は、植物園の園長さんのようにわかりやすく、なおかつ自然と木に興味を持たせてくれる語り口です。それを植木の展示販売場で聞かされたら、かなり前向きな気持ちで庭に木を植えたくなるかもしれません。あるいは、ヤシの木の発注が先だった高崎市内のお客様も、丁寧かつ愛情を持って木を語る六本木さんだからこそ、緑を生かした外構を考えてくれると思えたのかもしれません。

理想の庭は白樺+ウッドデッキ?

「理想の庭、というのがあるんですよ」と六本木さん。いやいや、すでに理想的な庭をお持ちじゃないですか?

「それとは別に、昔から白樺の木が大好きで、ウッドデッキの真ん中をくりぬいて白樺の木を植え、ビロウヤシという葉が広く耐寒性が高いヤシを垣根にする。そんな庭、つくりたいですね」

白樺+ウッドデッキは高原の避暑地のイメージ。ヤシの木が醸し出す南国リゾート風とは趣が異なるので、六本木さんが理想する庭の実像もこの目で見てみたいものです。

「けれど、それはあくまで自分の理想であって、こちらからお客様に提案したりはしません。お客様の庭は、あくまでお客様のものですから。ただ、どんなご依頼も、まずは自分の家だと思ってプランニングに臨む。それは私が常に心掛けていることです」

外構やお庭、または庭のプランに関して、実物の木を含めて全てまかなえる藤照。植木に対して並々ならぬ愛情を感じさせる六本木さんに、後編では庭づくりに向けたアドバイスをお聞きします。

プロフィール

六本木 正

1971年生まれ。株式会社 藤照 代表取締役。建設会社勤務を経て、2007年に株式会社 藤照を設立。建設会社で身につけた知識と経験を活かし、お庭づくりだけでなく、水道工事や舗装なども請け負うことができる。お客様に喜んでいただけるよう、日々情報収集を怠らず、新しいアイデアを取り入れた提案・施工をするよう心がけている。趣味は旅行、スポーツ観戦、食べること。


HP:http://to-sho.com/

Text:田村 十七男
Photos:大石 隼土